田迎からの塾通い
田迎町から当教室までは自転車で10分くらいかかる距離にある。
数名の生徒は田迎から通う生徒だ。
数年前、教室が始まる直前に、にわか雨が降ったことがある。
ザーザーと、しっかり振っていた。
『うわーうわー!』
と駆け込むように生徒が到着する。
「いきなりの雨振ってきたね。結構ぬれたど?」
と、タオルを渡した。
ほとんどの生徒はタオルでなんとかなる濡れ方をしていたが、
田迎から通っている生徒は通塾時間が長いため、ヒタヒタと、制服から水滴が落ちていた。
こりゃタオルじゃ間に合わん…
「どうする、一度帰るね?」
と聞いたら、
『ぜんぜん大丈夫っす』
と、元気よく答えた。
「ばってん、それはあんまっばい。ちょっと待っときなっせ」
といい、二階から、私服を持ってきて
「上だけでも着替えなっせ。風邪ひいたらたいへんぞ」
と着替えさせた。
『ありがとうございます、洗って返します。』
「いつでもいいけんね。」
と、その日の授業は終わった。
彼は無事公立高校に合格し、日々を楽しく過ごしているだろう。
しかし、君は、忘れてしまっているのではないだろうか、Tシャツが借りっぱなしになっていることを…